北アルプスと言えば白馬や槍・穂高そして剣・立山を思いつきます。
賑やかで華やかなこれらの山域とはうってかわって、静謐な秘境の山域。
そんな北アルプスでも、あまり知られていないスゴ乗越とはどんなところなのか紹介しましょう。
右:小屋前のベンチ、奥は上の廊下と烏帽子。
左:小屋の前は、樹林帯の中にあるわりにはに眺めが良い。
立山から薬師への稜線は、北アルプスの中ではどちらかと言うとマイナーなコースです。
が、そのおかげで、7月下旬からお盆にかけての最盛期でも比較的登山者は少ないため、
ゆったりとした登山が楽しめます。(もちろん、週末などは畳1畳に2人と言う場合もありますが…)
左:間山への登り。奥に薬師の頂上が見える。
右:北薬師の肩から二重稜線と五色方面の稜線を望む。
スゴ乗越小屋は、その小屋の立地条件からしても、特に見所があるわけでもないので、
お助け小屋としての意味合いが強いと思われています。
ガイドブックなどを見ても、水がうまい!とか小さくて可愛い小屋といったところで、
あまり小屋の周辺についての記述はされていないことが多いようです。
小屋の周辺は樹林帯であるためあまり知られていないのですが、
実は高山植物が非常に多い場所でもあります。
大きな群落はありませんが、種類が豊富で結構楽しめます。
左:2階のベランダにも椅子とテーブルが用意されている。
中:赤牛岳を眺めながらビールを飲もう! 天気のよい日は物干し場になることも・・・
右:8月ともなれば、小屋前のベンチも混雑する。稜線の小屋なのに水量が豊富で、驚かれることが多い。
スゴ乗越小屋の歴史は結構古く、昭和32年に営林署の管理小屋を先代の五十嶋文一氏が譲り受けています。
現在までに何度か小屋にも手が入り、数年前には食堂部分が改築されて新しくなりましたが、
客室はほとんど手が入っていないので、小屋の歴史を感じることができます。
なお、旧食堂部分の梁は、現在小屋前のベンチとして再利用しています。
左:越中沢岳。中央、五色方面への稜線上に立山の頂上が少しだけ頭を出す。
右:赤牛岳と左奥に三ッ岳。赤牛岳の手前に幻の楽園”薬師見平”を望める。近くて非常に遠い所だ・・・。
展望に関しては、南側と西側がしらびその樹林帯で
展望がきかず残念ながら薬師岳の頂上を見ることは出来ません。
しかし小屋前からの、東側に烏帽子岳と北側に越中沢岳の迫力ある景色が広がっています。
さらに天気の良い日によくみると、立山の頂上も越中沢岳の稜線越しに見ることが出来ます。
左:右手前がスゴの頭、左奥が越中沢岳。五色まではアップダウンが延々と続く。
右:大雨で水量の増した広河原付近。ちょっと見えずらいが、広河原いっぱいに川幅が広がっている。
この距離でも川の音は相当なものだ。
昭和55年に当時の小屋番さんが間山から水を引いてきました。稜線の小屋にしては珍しい水の豊富な小屋です。
ただ、水源から小屋まで距離があるので、維持管理には苦労が絶えません。
左:1F自炊スペース。ここは客室だったが改築時に取り壊し自炊スペース兼お客さんの憩いのスペースとなった。
ちょっと暗いのが難点だが、夜はランプの明かりでムード満点。
中:改築された受付。窓が大きくなり明るくなった。おみやげや食料品がところ狭しとならんでいる。
ジュースやビールなど飲み物と食料品は外側からも買うことが出来る。
混雑時は、3方向からお客さんが話しかけてくるので大忙し。
右:2F客室。2段ベットになっている。非常に古い建物だが、しっかりした造りになっている。
柱の質感が年代を感じさせる。上の段で寝る人は天井が低いので頭を打たないように・・・。
スゴ乗越小屋は立山と薬師岳の中間に位置し、夏のハイシーズンでも平日になれば道行く人も少ない山域です。
7月下旬から8月のお盆までの週末になれば、この静かな山域にも人が集まってきます。
混み合う日は日は、小屋が小さいため布団1枚に2人で休むことになります。
普段のんびりした小屋なので、この時期に来たお客さんを部屋に案内するのはつらいものがあります。
「昨日はお客さん少なくて、ここは楽天でしたよ!」などと言いながら案内しています。
次くる時は空いてるときに来て、2階のベランダでのんびりビールでも飲んでください…。
左:スゴ乗越付近から見た小屋と薬師岳の稜線。
中:越中沢岳から見た薬師岳。
右:幕営地から見た小屋と間山。奥に見えるのは北薬師の肩。
小屋から薬師岳方面に少し登って片側の切れ落ちた斜面に出ると、上廊下の広河原がよく見えます。
この辺りには、ベンチも用意してあるので散歩コースに良いでしょう。
左:夏も盛りになると、コバイケイソウが満開。花の匂いに誘われて、アブたちが楽しそうに群れている・・・。
右:小屋から少し間山側に行ったところにある黒部展望ベンチから見た上ノ廊下(広河原付近)。奥の稜線は烏帽子岳から南沢岳・船窪方面。大雨が続くと、広河原いっぱいに川幅が広がり、濁流の音がスゴの小屋まで聞こえる。